(この記事は「あるドイツ人の戦後(上)」からの続きです。)
――ご両親とはどういうことを議論なさったんですか?
H:僕が知りたかったのは、父がどういう役割を演じたのか、彼はどういうふうにそれに参加したのか、どの程度ナチスの体制を理解していたのか、でした。それに対する彼の答から僕はある程度知ることが出来ました。父とはそういう話がまだ出来たんです。でも、母は一切聞きたくないと言い、「ばかなことばっかり言わないで。社会主義者のふりなんてしないで」と言うばかりで、完全に僕とは反対の立場に立った。
父はとにかく僕に答えようとしてくれ、兵士の役割というもの、兵士の道徳というものについて、将校の道徳というものについて語り、政治的な話はしたことがありませんでした。それが先ほどお話ししたようなことだったのです。
当時のドイツにおいて、社会的には完全に、公的にそういった議論がなされることはありませんでした。その動きが起こったのは68年のことです。その年はドイツも含め、世界的に大きな変動が起きたのです。
それはまず、新しい世代が台頭した年でした。それは実際には45年生まれの僕の世代だったわけですが、それは戦後最初に生まれた世代です。僕たちはそれまでとは違う世代であり、ある意味では戦争の結果による苦しみを大きく受けた最初の世代でもありました。
......もっとごろごろ