台湾の女性作家であり、元文化相の龍応台の日本語版新作「父を見送る 家族、人生、台湾」(天
野健太郎・訳/白水社)を読んで、一番印象深かったのはそこから湧き出る「共感」でした。
住む国が違えど、言葉が違えど、文化も違うのだけれども、読んで何か心から湧き上がる感情。
そんな「共感」を覚えることができるアジアの書籍がもっともっと紹介されるといいな、と切
に思います。
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「なんて可愛い人なんだ」
この本を読み進めていくうちに思った。
龍応台、1952年生まれ。決して「可愛い」などと言われる年齢ではない。
龍応台、「1985年、『中国時報』紙上に掲載された評論が戒厳令下の台湾社会で大きな反響を
呼び、出版された『野火集』は台湾出版界空前のベストセラーとなった」。ここからも決して
「可愛い」人には思えない。
龍応台、「1999〜2003年、台北市文化局初代局長。2005年7月、龍応台文化財団設立。新竹
清華大学教授、香港大学教授を歴任。2012〜2014年、台湾行政院文化部部長(文化大臣)」。
これらの経歴を読むと、ますます「可愛い」人から遠のいていく。
以上はこの本の奥付にある著者の経歴に、理解しやすいように多少わたしが手を加えたものだ。
覚えておられるだろうか、わたしが前著「中国新声代」でインタビューした龍応台を。
そして、このメルマガ「ぶんぶくちゃいな」52号で取り上げた龍応台の著書「台湾海峡一九四
九」を。
前述の経歴にあるように大反響を呼んだ『中国時報』紙のコラム掲載時には、その名前と厳しく
政府を糾弾する口ぶりから多くの人たちが、「このご老人はいつか暗殺されてしまうのでは」と
気をもんだ。
実は「龍応台」は当時まだ33歳の若き女性教師だったのだ。そんな彼女を「可愛い」なんて思う
日が来るとは。
●「可愛い」人
彼女を「可愛い」と思うのはなぜか。この本を読み進めていくと分かる。
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2015年10月03日
メルマガ号外《読んでみました中国本》配信:龍応台・著「父を見送る 家族、人生、台湾」
2015年09月22日
メルマガ《§ 中 国 万 華 鏡 § 之 ぶんぶくちゃいな》の第106号「安保法案可決に見る中国のロジック」配信
メルマガ《§ 中 国 万 華 鏡 § 之 ぶんぶくちゃいな》の第106号「安保法案可決に見る中国のロジック」配信しました。
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安全保障関連法案(以下、安保法案)がとうとう成立した。結果的に日本の世論を二分するに至ったこの法案の本質と、日本の今後については、これからも多くの人たちの懸念や不安、そして希望や期待が入り混じった意見が闘わされるはずだ。
今回は、この法案の審議の最中で安倍首相に何度も仮想敵国に名指しされた中国の態度とその意図をお伝えしたい。
●日付けの妙
安保法案は強行採決の末、19日未明に成立した。自民党側は当初、18日採決を目指していたことに、一部の反対派からは「あまりにも無神経」という声が上がっていた。
というのも、9月18日は1931年に旧満州の奉天近くにあった柳条湖という場所で、満州鉄道の線路が爆破された、所謂「柳条湖事件」(柳条溝事件)が起きた日だ。当地を占領していた関東軍はこれを中国軍によるものとだとし、それを口実に中国への侵略を大規模に進めていくことになった。
今ではすでに、事件を引き起こしたのは中国軍ではなく関東軍だったと認識されている。その分、中国人にとっては屈辱感が大きい記念日でもある。戦後70年経った今年、再び中国を視野に「安全保障」を口にするようになった日本政府が、この日を採決の日に「選んだ」のは偶然すぎるほどの偶然だった。
安倍政権にとってみれば、このスケジュールは7月に衆院で可決した安保法案を規定された60日以内に、そしてシルバーウィーク前に参院で通すための選択でしかなかったのだろう。それを「無神経」と決めつけてしまうことには、わたしは個人的にちゅうちょがあるが、ただもっと外交的に敏感な、あるいはもっと外交というものに対してセンスのある政府であったのならば、それとなくこの日を避け、「無駄な色のつかない」採決に持っていけたはずだ、と想像する。…
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2015年09月14日
メルマガ《§ 中 国 万 華 鏡 § 之 ぶんぶくちゃいな》第105号「郭美美、24歳の人生」配信〜
メルマガ《§ 中 国 万 華 鏡 § 之 ぶんぶくちゃいな》の第105号「郭美美、24歳の人生」配信しました。
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今週は懐かしい名前がニュースを飾った。
郭美美。
ネットで突如として注目されるようになったこの1991年生まれの女性は、一時は中国のネットを飛び越え、メディア中の話題をさらい、新聞の政治面でも盛んにその存在が論じられた。「必ずや中国の社会事件の歴史に名を残す」と言われている人物だ。
●「見せびらかし」の寵児
タレントでもないし、有名家庭の出身でもない彼女が突然注目を浴びたのは2011年、中国の国産SNS「微博 微博」(以下、ウェイボ)に郭美美が開いたアカウントの肩書が「中国紅十字会 ビジネス総経理」となっていたためだった。
中国語で「紅十字会」といえば、いわゆる「赤十字」のことだ。世界的な人道支援機関である赤十字だが、キリスト教などと同じように中国においては国際機関の直接運営ではなく、中国独自の運営機関が存在し、それが国際機関に「所属する」という形で正統性を表明している。
だが、人道支援機関である赤十字に「ビジネス」「総経理」が存在し、さらにはそれが20歳になったばかりの「小娘」であることが人びとの注目を集めた。さらにそんな肩書を持つ郭美美が、ウェイボ上に載せていたのは、これでもか時飾った自分の姿や高級有名ブランドの製品、さらにはイタリアの高級スポーツカー「マセラティ」を買ってもらったなどと見せびらかすような写真や内容ばかりだったのだ。
人びとは「火」へんに「玄」と書いて「しゅえん」と呼んだ。何かを他者にひけらかすことを中国語で「(しゅえん)耀」という。そこから、妬みと羨ましさを込めて、ネットの書き込みや言葉の端々にひけらかしを感じる時に「しゅえん」という言葉が使われるようになった。
しかし、だがウェイボアカウントの肩書は「ビジネス総経理」というものの、郭美美の書き込みをどんなにたどってもビジネスの話は一切出てこず、一方で誰と遊んだ、何を買った、何を買ってもらったといった話題、それもわずか20歳の娘が自分で稼いだとは思えない、毎日の浪費生活が続いているだけだった。
それを目にした人びとが不審を感じたのは、妬みからだけではなかった。
●政府の末端機関としての「中国紅十字会」
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2015年09月08日
「§ 中 国 万 華 鏡 § 之 ぶんぶくちゃいな」第104号「抗日戦争勝利70周年記念閲兵式 」配信!
メルマガ《§ 中 国 万 華 鏡 § 之 ぶんぶくちゃいな》の第104号「抗日戦争勝利70周年記念閲兵式」配信しました。
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9月3日、誰もが予想していたとおり、真っ青な空の下で行われた北京・天安門広場の
閲兵式。そのイベントは正式には、「紀念中国人民抗日戦争?世界法西斯戦争勝利70
週年大会」(中国人民による抗日戦争及び世界ファシスト戦争勝利70週年記念大会)
という名称だった。以下、「抗日戦争70週年式典」と呼ぶことにする。
日本のネットのコメントを見ていると、あの閲兵式の様子とパレード自体に嫌悪感を示
す人がほとんどだが、2009年に行われた中国建国60週年パレードを知っている身から
すると、「地味だったな」と感じた。もちろん、日本人が今回のパレードを毛嫌いする
のはそこに「抗日」という言葉が入っているからで、パレードやそこで見せられる武器
の華やかさとは直接関係ないのだろうが。
しかし、「中国共産党の執政の正統性は抗日戦争を出発点とする」とよくいわれる中国
で、まさに軍がその正統性を表現できる場において、どうしてこんなふうに地味でいら
れたのかがやはり不思議だった。「戦ったのが国民党軍で、共産党の軍隊じゃないから、
こっ恥ずかしいんでしょ」といった書き込みをネットでも見かけたが、中国にそういう
メンタリティがあるなら、共産党の勝利と書いた教科書はとっくに書き換えられている
はずだし、今回のパレードで使われる言葉も違ったはずだ。自分の視点で相手を決めつ
けるのは、自己満足でしかない。
建国60週年パレードでは、解放軍はここぞとばかりに「最新のミサイル」(真偽の程
はわたしにはわからないのだが)とか戦車とかを並べ、とにかくハデハデしく場を盛り
上げていた。今回は人数も建国60周年の8000人に比べて1万2000人と参加者も増
えているし、パレードに参加した軍部のチームは65チームと、建国60周年の56チー
ム(これは中国の民族の数と同じ)に比べて多かったはずなのだが、なにかが違った。
建国60周年ではそんな軍隊に、10万人を超えると言われた「民衆パレード」が続いた。
今回はその民衆パレードがカットされ、抗日戦争を実際に戦った老兵士(元国民党兵士)
や、海外17カ国の軍隊代表らのチームに取って代わられた。
地味だと感じたのはやはり私だけではなかった。ネットにはミリタリーオタクから不満
の声がたらたら。軍の晴れ舞台のはずが彼らを狂喜乱舞させるような最新鋭武器が並ば
なかったからだ。一部からは「女性兵士はどうした?」という声も上がった。そうだっ
た、2009年のパレードはモデルかと見まごうようなスタイルの良い美女兵士が行進し
たのも話題になった。一部では「あれは兵士ではなく、本物のモデルたちを集めたのだ」
とも言われているが、長時間の一糸乱れぬ軍隊式行進の訓練を突破したのだから、たと
えモデルであっても見上げた根性といえるだろう。
だからこそ、今回、解放軍が「戦勝」を記念する場でどうしてこんなにおとなしくなっ
てしまったのか? それこそ自身の強大さを示す絶好のチャンスのはずなのに?
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2015年09月06日
メルマガ号外「読んでみました中国本」配信:エヴァン・オズノス著「ネオ・チャイナ:富、真実、心のよりどころを求める13億人の野望」(白水社)
メルマガ《§ 中 国 万 華 鏡 § 之 ぶんぶくちゃいな》夜間飛行配信読者向け号外「読んでみました中国本」を配信しました。8月の号外で取り上げたのは、エヴァン・オズノス・著「ネオ・チャイナ:富、真実、心のよりどころを求める13億人の野望」(白水社)です。今年の超おすすめ中国本です。
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先日、香港で別れたきり約23年ぶりに会った香港編集者時代のイギリス人元上司にひとしきり最近の中国の話を求められた。元上司は言った。「あの頃の中国人は、“To get rich is glorious”と言っていたらしい。今でも人々はそうなのかな?」
1990年代、当時英語話者の間では同じタイトルの本(http://amzn.to/1hqB3ut )が中国を知るための本としてもてはやされていたらしい。“To Get Rich Is Glorious”――豊かになることは名誉なこと、そこには明らかに「rich」と「glorious」という2つの、英語世界で(そして日本語でも)まったく違う価値観に属する言葉が等号で結ばれていることに対する違和感があった。それがわたしの元上司のような人びとをして「特殊な中国」の符号になっていたのだろう。
わたしは彼の質問にこう答えておいた。
「リッチになること、それがまだまだ多くの人たちの目標であることは間違いないですね。ですが、そのことを『名誉』と言い放つのはさすがにダサい、と人々は認識しています。ただ、以前とは違って、リッチになれば『権利』と『権力』がもれなくついてくる時代になった。そこに人々はしらけつつも、自分と家族の身を守るためにリッチにならざるを得ない、そんな感じが今のムードでしょう」………(続きは、メルマガ《§ 中 国 万 華 鏡 § 之 ぶんぶくちゃいな》でどうぞ)
◎864円/月(初月無料):通常号2回+臨時増刊号2回+中国本書評号1回
2015年08月24日
《§ 中 国 万 華 鏡 § 之 ぶんぶくちゃいな》第103号「「消防隊員」の謎」配信!
メルマガ《§ 中 国 万 華 鏡 § 之 ぶんぶくちゃいな》の第103号「「消防隊員」の謎」配信しました。
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天津の濱海新区で12日夜半に起こった危険化学品大爆発事故で亡くなった人の数は、22日午後3時の時点で121人を数えている。その内訳は「公安消防隊員19人、天津港消防隊員48人、警官7人、その他45人、身元不明者2人」、合わせて発表された行方不明者(連絡の取れない人)は54人で、その内訳は「公安消防隊員5人、天津港消防隊員32人、警察官4人、その他13人」という(天津市副市長が発表)。
●「連絡の取れない人」
すでに事故発生から10日が経ち、この「連絡の取れない人」たちの生存は絶望視されているが、遺体が見つかるまでは死亡者数を増やしたくないということだろう。ちなみに、7年前の2008年に起こった四川大地震の行方不明者数の統計は、同年9月25日発表の1万7923人という数字以降発表されていない。つまり、「遺体が見つかるまでは行方不明者」というのは決して「遺体を見つけ出そうと最善の努力をする」という意志ではないのである。
ちなみに、それを「中国的」と片付けることはできない。というのも、ニュースポータルの『網易』は2013年9月に、日本で2011年に起こった311東北大震災の行方不明者を捜す日本の警察たちの活動を写真付きで「日本はいまだに2年前の地震行方不明者を探している」と伝えている…
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2015年08月16日
「§ 中 国 万 華 鏡 § 之 ぶんぶくちゃいな」102号:「安倍戦後70周年談話が「語った」もの/天津爆破事故メモ」配信!
メルマガ「§ 中 国 万 華 鏡 § 之 ぶんぶくちゃいな」の第102号「安倍戦後70周年談話が「語った」もの/天津爆破事故メモ」配信しました。
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今週は中国がらみでいろいろありすぎて、ぶんぶくちゃいなのトピックも3回変わりました。ということで、トピックでは今回、戦後70周年談話を取り上げました。
もう一つの話題はなんといっても天津の爆発事故について。ですが、これも刻々と状況が変化しており、まだまだ全容がつかめません。さっさと貼られた天津市内メディアへの報道規制の他に、全国メディアに対する報道規制、そしてネットの書き込み削除などをくぐり抜けて、どうやったら日本で現地の情報をつかむことができるのか。天津の事件に絡めて、わたしがとっている手段を以下、ご紹介しようと思います。
これまで何度繰り返してきたか分からないほどの「ネット書き込み削除」の嵐再び。当局が、市民がネットにあげる情報に神経を尖らせる非常事態時には過去何度も培ってきた経験が役に立ちます。
1) 日頃から信頼しているメディア・人物が流す情報に情報源を集中させ、情報をピックアップする。
→非常時にはさまざまな情報が出てくる。現地事情がよくわからない人間としては、まず日頃から万全の信頼をおいているメディアと人物たちが流す情報に注目する。日頃の……
(続きは、「§ 中 国 万 華 鏡 § 之 ぶんぶくちゃいな」http://www.yakan-hiko.com/furumai.html でどうぞ)
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