2015年08月25日

【万華鏡クリップ】中国人SF作家の劉慈欣作品『三体』が、SF界の「ノーベル賞」とも称されるヒューゴー賞を獲ったことに国内メディアとSFファンは大喜びしているが、作者本人は非常に冷めている。

中国人SF作家の劉慈欣作品『三体』が、SF界の「ノーベル賞」とも称されるヒューゴー賞を獲ったことに国内メディアとSFファンは大喜びしているが、作者本人は非常に冷めている。

アジア初のヒューゴー賞受賞作家となった劉慈欣は北京紙『京華時報』のインタビューに答えている。

「『パピーゲート』事件が多くの要素をヒューゴー賞に介入させてしまった。客観的に言うと権威性が失われ、ヒューゴー賞は信頼性をなくしてしまった。今年のヒューゴー賞受賞作品にはある意味偶然性があるし、とても残念なヒューゴー賞だ」



1953年に始まったヒューゴー賞はこれまで基本的に白人男性によって運営され、ノミネートされたのもほとんどが白人、その多くが男性だった。だが、ここ数年来、変化が現れ、非白人男性がノミネートされ、受賞する例が出現。これに不満を持った右翼SF作家たちが、いわゆる「政治的なコレクトさ」を持つ作家や、「政治的コレクト」な人物が登場する作品が優遇されていると考え、「反差別」を唱えるようになったのだ。

ヒューゴーが受賞作選定に採用しているのは、ファンの投票制度で、世界SF大会のメンバーであればだれでもノミネートと評価に参加できる。これが利用された。右翼作家たちが「サッド・パピーズ」(悲しむ子犬たち)行動を呼びかけ、彼らの審美眼にあった作品を「ホワイトリスト」としてあげ、世界のメンバーにそこからの投票を呼びかけた。さらに今年、その右翼作家のうち、急進的な人物がそれをさらに激化させた「ラビッド・パピーズ」(凶暴な子犬たち)活動を始めた。

その結果、今年は17項目の賞にノミネートされた85作品のウチ61作品は「パピーズ」が提出したリストと一致している。そして、劉慈欣の作品『三体』はそこには入っていなかった。

だが、この「パピーズ」運動のホワイトリストに掲載された作家2人が、このような行動に不満を表明し、ノミネートされた最優秀長編作品の最終選考を辞退した。そのうちの1人、マルコ・クルース氏が辞退後、『三体』を推薦したのである。

さらに皮肉なことに、「ラビッド・パピーズ」の発起人が、この『三体』をすでに読んだと声明を発表し、最初のホワイトリストに入れたのだ。これにより、『三体』は支持を得て、最優秀長編作品の代替候補として入選し、最終的に受賞した。そこに劉慈欣が言う「偶然性」がある。

だが、なぜ『三体』がレイシズムを貫こうとする右翼作家たちに受け入れられたのか。陰謀論的に想像するならば、『三体』は文化大革命に触れており、それを知りたいと思っている西洋資本主義国の人たちの琴線に触れたのではないか。もう一つ、『三体』が持つ魅力がレイシズムを超えた、という見方もある。
posted by wanzee at 11:52 | Comment(0) | TrackBack(0) | ニュース記事から | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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