とはいえ、ここ2‐3カ月に読んだ本は、なかなか収穫があり、いろいろと考えるのに役立ちました。基本的には「知識の吸収」の本ばかりですが、今の自分の立ち位置とか、日ごろ目にしていること、そして考えていることなどが本の内容とリンクして、非常に楽しく読めた本を以下、数冊ご紹介します。
1)「LIVE講義・北朝鮮入門」 礒崎敦仁 / 澤田克己 (東洋経済)
大学での講義録をまとめた本。なので、章ごとにきちんとテーマが分かれており、そしてそれぞれのテーマを参照しつつ、次のテーマへと向かっていくので、非常に読みやすい、文字通りの「入門」本。わたしはこれまでほとんど北朝鮮には興味がなかったのですが、最近、中国の話を聞かない北朝鮮の動きに、中国政府がかなりいらいらしているところをよく目にするようになり、「中国を困らせる北朝鮮」とい宇視点から興味が湧き始めたのです(笑)。中国は国内にも言うこと聞かない駄々っ子(民衆)を抱えている分、だんだん北朝鮮のこともどうでもよくなってきているような…ま、とにかく、そんな北朝鮮を肌感覚で知るには小難しくなく、またあげられている例や事象も分かりやすく解説されており、本気で、そして先入観なしに「北朝鮮」を読んでみたい人にはお薦めです。
2)「岐路に立つ中国‐超大国を待つ7つの壁」 津上俊哉 (日本経済新聞出版社)
ぶっちゃけた話、最近、中国関連で出版される本で、「読みたい!」と思う本がほとんどありません。理論的にこねくり回したもの、あるいは経済だけに特化されているもの、あるいは中国旅行記や中国での生活を面白おかしく書いたもの(ただ、この手の本は最近ぐっと減りましたけど。なんでだろ?)、あるいはとにかくおどろおどろしく、自分の都合のよい「中国観」に読者を引き込もうとするもの。いや〜本当に勘弁していただきたい、と思います。なにを「勘弁」というかというと、どれもこれも一面だけを切り取って、出版目的にフィットさせたものばかりなんですね。だからたいがい、書名と出版社の名前を見たら、もう中身は見たくない。そういう本ばかり。
この本は基本的にわたしの苦手な経済面からの読み解きですが、ただ、90年代から元通産省職員として中国に関わり、その後コンサルタントのお仕事で実際に中国に足を踏み入れ、現実の中国を眺めてこられた著者の中国分析はなかなか生々しいものがあります。今の中国は経済に影響された社会が大きくモノをいう時代ですが、こういった分析が学者さんの中から出てこないのが残念。「経済」から中国を見る日本人が多い昨今、最新の中国事情を読むことができる良書です。
3)「日本人が知らないウィキリークス」 小林恭子 / 白井聡 / 塚越健司 / 津田大介 / 八田真行 / 浜野喬士 / 孫崎享 (洋泉社新書)
インターネットが始まった時から、価値観の変化は起こっていたはず。それがアサンジという、ノマドな生活体験をしてきた人によってど〜んとあらわになった。世界ノマドの時代。我々だって、北京に座ってアメリカのニュースを「体験」できてるし、たった今起こった延坪島の事件を日本語で知ることができる。タテからシタへの情報は流れ落ちて終わり、でもヨコへヨコへと流れて行く情報は地球をぐるぐる回り続ける…この本には「ウィキリークス」についてだけではなく、そんな時代を読みとくための証言も含まれています。それを体験すると、たぶん、きっと分かってくると思います、そんなウィキリークスの時代が。
4)「Wikileaks アサンジの戦争」 デヴィッド・リー / ルーク・ハーディング (講談社)
そういえば、日本でもあまり話題に上っていませんが、先月朝日新聞がウィキリークスがリークした、アメリカの外交文書のうち日本に関わるものを翻訳して発表しているそうですが、なんだかすでに「遅し」という感じ。もう新鮮味がなくなった? アメリカでは公開当初激しい非難がまきおこったけれど、「実質的にアメリカ外交に対して恵座億的な損害をほとんど与えていない」という結論を米政府高官らは下した模様だ(p330)と書かれている。この辺は日本のメディアではまだ報じられていないけれど、そうだとすれば、そういう意味でもアメリカの順応能力、あるいは状況判断能力というのは、すごいもんだな、と感じ入った次第です。「善」「悪」の定義は実はこんなにコロコロ変わる、てことですかね? …それにしてもアサンジはロンドンで保釈になった時に、「行動確認用の電気タグ」をつけさせられていたそうだけど、いまだにつけてんだろか?
5)「私のフォト・ジャーナリズム 戦争から人間へ」 長倉洋海 (平凡社新書)
一人のフォトジャーナリストの歩み。海外に出て、とにかく自分の目で見る、自分で感じて考える、というところから始めた点は、わたしの第一歩とおんなじで、著者がアフリカで、あるいはフィリピンで目にした出来事は全く違うけれど、受けたショックとか、チャンスが自分をかすった悔しさとか、目の前にあることが理解できずに苦しむ様子とか、すごくよく分かった。一つの社会をあるがままにまず理解する、というのは、実は自分の「常識」との戦いで、まったくその常識を捨て去って「非人間」になるのではなく、「異文化」を受け止める過程というのは、ある意味、自分の中に「第三、第四の目」を持つことだと思う。それは常に、今までの自分との戦い、そして目にしたものへの執着によって磨かれ研ぎ澄まされ、それを繰り返すうちに、自然に身について行くことだと思う。
今はもう超有名フォトジャーナリストになった著者の回顧録と思って読むか、それとも自己鍛錬の手引書として読むかによってたぶん、読み方はかなり違ってくると思います。わたしは初心を思い出してとても感動した一冊。
6)「世論の曲解 なぜ自民党は大敗したのか」 菅原琢 (光文社新書)
この本の豊富なデータ分析を読めば、09年の自民党の大敗が、身から出たさびだったことが分かる。ネットとか、民主党とか、そういうものはわき役だった。そういう意味で日本の政治文化を見直すには非常に役に立つ。わたしなんか、原発事故の情報管理や情報伝達で民主党首脳に不信任案を突き付けようとしている政界の動きの中で読んだから、とても面白かったです。基本、政治家の脳みそはあんまり当時と変わっていません。ブレークスルーを求める政治家には、世論と社会についてのこのデータと分析きちんと読んで考えていただきたいものだ。
以上、書評でもなく感想文でもなく。



